にじむ線の美学と、心の輪郭をなぞる日。横山大観の誕生日に想ういろいろ

「Goods-Bye」からのお知らせ・ラブドール処分屋店主の雑記

今日は4月5日、日本画の巨匠・横山大観の誕生日です。1868年に生まれ、昭和33年に没するまで、彼は日本画の革新に挑み続けました。とくに有名なのは、線をぼかして描く「朦朧体(もうろうたい)」という独自の表現技法です。当初は伝統から外れると批判もありましたが、それでもなお彼は自分の信じる美を追い求め、日本画に新たな命を吹き込みました。

私が初めて横山大観の作品に触れたのは、美術館で見た「無我」という作品でした。幼子の柔らかな姿が、輪郭もはっきりせず、空気のようにやさしく画面に広がっていました。筆の線が曖昧であるにもかかわらず、不思議と感情の奥に届いてくるような温かさがあり、立ち止まってしばらく動けなかったのを覚えています。

にじむ線、ぼやけた輪郭、あえて描きすぎない余白——それらはまるで、人の心そのもののようだと私は思います。私たちの感情や記憶も、輪郭はあいまいで、時とともに変わっていくものです。それを否定せず、そのままのかたちで受けとめ、表現する姿勢に、私は深く共感を覚えました。

ラブドールの処分という仕事に携わっていると、日々、目に見えない「想いの重み」に触れる瞬間があります。処分とは、単に物を片付ける行為ではなく、それまでの時間や記憶と静かに向き合う行動でもあると、強く感じるようになりました。

お客様が手放そうとしているのは、ただの「物体」ではなく、時に心の拠りどころとなっていた存在です。言葉にされない想い、簡単には割り切れない感情――それらが静かに、しかし確かに詰まっているものです。

そのため私は、単に作業をする人間ではなく、「そっと背中を押す存在」でありたいと思っています。葛藤や迷いの中にいる方にとって、信頼して任せられる誰かがいるということが、心の整理において大きな意味を持つのではないでしょうか。

処分のご依頼をいただいたとき、私はまずその選択を尊重し、そこに至るまでの歩みを想像します。そして、どのような想いでいらっしゃるのかを察しながら、丁寧に、静かに、その役割を果たすよう心がけています。

なお現在、ラブドール処分専用の特注段ボール箱のご注文も承っております。お客様のドールのサイズに合わせて自由なサイズで製作可能です。製作にはおおよそ1週間程度の納期をいただいておりますので、必要な方はお早めにご相談くださいませ。

横山大観が「線をにじませる」という方法で、心の奥に触れる芸術を追い求めたように、私もまた、お客様の気持ちににじむ想いを丁寧に受けとめ、形にしていく仕事を続けていきたいと思います。

今日の柔らかな春の日差しの中で、桜の花びらがそっと舞う姿を見て、大観の描いた淡い風景のような時間を感じました。見えるものと見えないもの。その間にある、にじみや余白を大切に、今日も静かに、心を込めて仕事に向き合っていきます。

タイトルとURLをコピーしました