年の瀬の空気は、朝から少しだけ緊張を含んでいます。街を歩く人の歩幅がそろい、用事の数が多い分、視線は前へ前へと急ぐ。それでも、立ち止まって耳を澄ませば、年末特有の音が確かにあります。シャッターの開閉、段ボールの擦れる音、レジの電子音、遠くで響く電車の走行音。今日は、締めと始まりの狭間にある日。片づけと移動、準備と回想が、同時に進む日です。
12月30日は地下鉄記念日でもあります。1927年、上野―浅草間に日本初の地下鉄が開業した日。地上の喧騒を離れ、地下に都市の動線を通すという発想は、暮らしの速度を決定的に変えました。私は大阪で暮らしてきましたが、地下鉄の存在は、単なる移動手段以上の意味を持っています。暑さ寒さをいなし、雨を避け、時間を一定に保ってくれる“生活の背骨”。朝夕の混雑、発車ベル、ホームの風。どれも匿名でありながら、日々の記憶を運ぶ器です。
地下鉄に乗ると、思い出は駅単位で立ち上がります。学生のころに通った駅、初めて働いた職場の最寄り、誰かと別れた帰り道。都市の動線は、人の時間を折りたたみ、また広げる。年末に地下鉄を使うと、行き交う人の荷物が少し増え、行き先が多様になるのが分かります。帰省のスーツケース、贈答用の紙袋、買い出しの袋。地下を走る列車は、個々の暮らしを静かに載せて、年越しへと運んでいきます。
家に戻ると、今日は大掃除の最終日モード。私はこの日を「段取りの総仕上げ」に充てます。やみくもに拭くのではなく、出す→分ける→戻す→捨てるの順を崩さない。まずは机の上のものをすべて出す。次に、使う頻度で分ける。戻すものは“戻す場所”を決めてから戻す。迷うものは保留箱へ。最後に、捨てるものは迷わず捨てる。この順番を守るだけで、片づけは驚くほど早く終わり、部屋に余白が生まれます。余白は見た目だけでなく、判断の速度を上げてくれる。来年の自分にとっての、いちばん実用的な贈り物です。
大掃除の合間に、年越しの準備も進めます。買い出しのリストは短く、重複を避ける。数の子や黒豆のような“意味を食べるもの”と、普段使いの食材を混ぜない。鍋のだし、蕎麦、薬味。あれこれ豪華にしない代わりに、失敗しない定番を丁寧に。台所の動線を整え、包丁とまな板を出しやすい位置へ。ここでも、段取りが効きます。
帰省という言葉を聞くと、「実家」という時間の層が立ち上がります。家そのものというより、そこで繰り返された年末の小さな儀式の記憶。障子を張り替える音、玄関を水拭きする冷たさ、煮物の匂い、紅白歌合戦の音量。年ごとに形は変わっても、「ここから新しい年が始まる」という合図は、儀式の集合体として身体に残っています。帰省しない年でも、同じ順番で掃除をし、同じ器を出すだけで、時間は自然に重なってくれる。
午後、用事で地下鉄に乗りました。年末の車内は、少しだけ柔らかい。人は多いのに、苛立ちが少ない。目的地が“年の終わり”に向いているからでしょうか。列車がトンネルに入るたび、外の景色は消え、代わりに車内の人間模様が浮かび上がる。地下鉄は、都市の記憶を保存する装置でもあります。地上の変化が激しくても、地下のリズムは大きく変わらない。その安定が、暮らしを支えている。
夕方、掃除の仕上げに床を拭き、最後にゴミをまとめます。袋の口を結ぶとき、今年の未完が一つ減る感覚があります。完璧ではないけれど、ここまでで十分。余白が残っている部屋は、来年の予定を受け入れる準備ができている。片づけは、過去を捨てる行為ではなく、未来の居場所をつくる行為なのだと、毎年この日に確かめます。
夜は年越し準備の確認。蕎麦のつゆを一度味見し、必要なら薄く調整。テーブルに箸置きを並べ、鍋の位置を決める。音楽は控えめに。窓の外を走る終電の音が、今日のBGMです。地下を走る列車の記憶と、家の中の動線が、静かに重なります。都市の背骨と、生活の骨組み。どちらも見えにくいけれど、確かに支えている。
12月30日は、派手な祝日ではありません。でも、締めと始まりの狭間に立つ、重要な踊り場です。地下鉄が日々の移動を整えるように、段取りが年の切り替えを整える。大掃除で余白をつくり、食卓の準備で時間を重ね、実家という記憶の層に触れる。そうして、明日の静けさへと進む。
今日はここまで。あとは湯に浸かって、体を温め、早めに休むだけ。地下を走る列車のように、無理なく、確実に。新しい年へ向かう準備は、もう整っています。
年末の片づけ最終日モードは、物理的な掃除だけでなく、気持ちの整理にも向いています。ラブドールの処分も、「出す→分ける→戻す→捨てる」という段取りで考えると、負担が少なく進められます。まずは情報を集める(出す)、必要事項を確認する(分ける)、正式な手順に沿って進める(戻す)、最後に区切りをつける(捨てる)。勢いではなく、段取りで整えるのが年の瀬には合っています。
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年内に無理をして完了させる必要はありません。見積り確認だけ、手順の相談だけでも大丈夫です。地下鉄が都市の動線を静かに支えるように、手続きは静かに、確実に。余白を残したまま年を越す選択も含めて、あなたのペースで進めていただければと思います。

